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心の煤払い

年の瀬も押し詰まってくると「大掃除」という言葉が耳に入ってくる。我々日本人が、こういった季節ごとの節目を伝統的に大切にしているのは、本当に良いことだと思う。

以前、ご近所の奥さんが、久しぶりにフロ釜の掃除をしたら、真っ黒い煤のようなものがいっぱい出てきて、本当にすっきりしたというお話を伺ったことがあるが、掃除をすることによって、本人の心まですっきりと掃き清められるものなのだ。掃除は、まさしく“心の煤払い”である。その昔、お釈迦様の弟子のシュリハンドクという方は、お釈迦様から一本のほうきを与えられ、一生懸命掃除をした結果、悟りを得て、お釈迦様の十大弟子となった、という話を読んだことがあるが、なるほどとうなずける話である。

幸田文さんの随筆には、父・幸田露伴の躾について、書かれた文章がある。露伴は、刺した雑巾は好まず「刺し雑巾は不潔になりやすいし、性のないようなぼろっきれに丹念な針目を見せて、糸ばかり残るなんぞは、時間も労力の無益」といい、汚れた雑巾で拭いては、黒光りするだけだ、きれいな水でよく拭き込んだ廊下は「花がつお」のような色と照りがあると教え、雑巾のしぼり方から、はたきの使い方、ふすまの張替え、薪割り、さらに鋤や鍬の使いかたまで、“渾身” ということを教わったと記されている。

イエローハットという会社を起こされた鍵山社長は、実にこの掃除の実践で、大きな会社を作り上げた。会社から最寄駅まで毎日掃除する話は、有名な話だが、鍵山社長の掃除をしている姿に感心した人から土地・建物の提供を受けた話など鍵山社長の著書「凡事徹底」(致知出版社)に詳しい。 あちこちで講演会も開いておられた。 掃除を大切にした松下幸之助さんや、丸井の青井社長、セブンイレブン、ディズニーランド 花王などなど多くの会社が、掃除を大切にしている。

私は、以前武道館の周辺の道路を掃除したことがあったが、タバコの吸殻の多いのにはびっくりした。「マナーからルールへ」というかっこいいキャッチフレイズがあるが、すべて規則とか罰則とかで規制しないとダメだという状況が、残念な思いだった。が、吸殻のあまりの多さに規則・罰則も現実的な対応で、やむなしと思うようになった。

家の周辺を掃除しても、このタバコとさらに犬の糞にお目にかかる。日本人の公徳心はどこへ言ってしまったのだろうと思ったりもするのだが、幼稚園の園児たちと「おはようございます」と挨拶を交わし、落ち葉なども、掃き清めるとすっきりとしたきもちで、仕事に取り組めるのだ。 事務所や倉庫のあふれている本の山を速やかに片付け、キチンと掃除をして、心を磨がいて仕事を進めたい。

掃除については、以下の二冊があった。
たかが掃除と言うなかれ 山本健治著  1996年 日本実業出版社
掃除が変わる会社が活きる 山本健治著 1995年 日本実業出版社。

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